薬科大学の研修で、東京にある「薬用植物園」へ行ってきました(植物の写真はその当時のものです)。
家の中にいても少し暖かさを感じる今日、薬草を見ながら春の薬膳・タケノコご飯を作ってみました。
今回は、薬草と薬膳のお話しをお届けいたします。
※東京都薬用植物園は、2020年4月の訪問です。
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東京薬用植物園
「東京薬用植物園」は、薬務行政の一つとして、薬用植物を収集・栽培している植物園です。
1946(昭和21) 年に開園した、東京都内でただ1か所の薬用植物園です。国内の植物だけでなく、世界各国の貴重な薬草や草木 (約1600種) が栽培されています。その中には、ちょっと見るだけでは分からない、毒性を持つ植物もあります。
イヌサフラン
イヌサフランの葉は、ギョウジャニンニクやミョウガと間違えられやすいそうです。
球根は、玉ねぎやジャガイモと思って誤食する中毒が起こっているそうです。普通にはえていたら、(ぱっと見)区別がつかないそうです。
スズラン
スズランは、国産種 (鈴蘭、君影草) と ヨーロッパ原産種 (ドイツスズラン) に分かれます。
とても可愛い花がつきますが、どちらも猛毒です。ただし、毒の成分は経口で有毒なので、スズランを触っても問題はありません。
ドイツスズラン
ドイツスズラン は、ヨーロッパの中・北部に生えている植物です。
日本のスズランに比べて、葉も花も少し大きいようです。花茎 (かけい) *1が長く、葉より飛び出しているので、花が目立ちました。
※花茎とは、植物において花のみをつける茎のことです。
ポイント
雄蕊の付け根が赤いと「ドイツスズラン」、白いと「スズラン」です。
スズランの香り
ドイツスズランは、花が大きく香りも強いため、香料に用いられています。
ただし、大量の花を集めることは難しく、通常の「水蒸気蒸留法」では、精油を集めることはできません。主に、アブソリュートという溶剤抽出法で精油が取られるそうです。溶剤抽出法とは、揮発性の高い有機溶剤を用いて、芳香を持つ天然植物から芳香物質 を抽出する方法です。
スズランの香りは、バラ、ジャスミンとならんで、三大フローラルノートと呼ばれています。グリーン系で帯びた透明感のある香りが特徴です。
日本で、しかも実際の花の香りが楽しめる貴重な体験でした。
キンラン
東京都薬用植物園では、注意喚起を促す植物だけでなく、自生している貴重な植物を見ることもできます。
キンラン (ラン科・キンラン属) は、低山や山地の林の中などで見られる多年草です。
ただし、絶滅危惧種 なので、近年は見つけることが難しくなっているそうです。環境が整わないと自生しません。
そのため、花自体も珍しいのですが、植物園には群生地もありました。
ポドフィルム
北米原産の薬草です。本当は (左の写真のように) 葉の下に花が咲きます。
しかし、 この年は暖かい日が続いたので (上の写真のように) 葉が成長する前に花が咲いて、こんな不思議な形になったそうです。
オタネニンジンと薬膳
オタネニンジン は、ウコギ科の多年草です。
葉を見ただけでは分かりませんが、根の部分は有名です。
オタネニンジン は、朝鮮人参 (薬用人参) として食欲不振や消化不良、病弱の際の強壮に用いられる生薬です。薬膳にも使われます。
江戸時代、八代将軍・吉宗の時代には、生薬を輸入に頼らず国産化する政策が取られていたそうです。
ドラマ(暴れん坊将軍)でも、この話があったことを思い出しました。
春は目覚めの季節(薬膳)
ここからは、薬膳のお話です。
薬膳とは、中医学 (中国伝統の医学) に基づいて作られた食事のことです。
作るときには、自分の体質を知ることも大切です。といっても、体質が異なる家族のために、別々の食事を作るわけにはいきません。そんなときは、季節の、旬の食材を選んで加えるといいそうです。
冬は、芽吹きの春に向けて 腎 に生命力を蓄える季節でした。春は 肝 にトラブルが起きやすく、解毒作用が弱くなります。春は、良くも悪くも目覚める季節です。
肝 の働きは、西洋医学でいう本来の肝臓の働きの他に、自律神経、目や筋肉、感情や情緒中枢のコントロール機能まで、システム的な部分をいいます。
「肝」と「腎」
薬膳で「肝」・「腎」といっても実際の臓器のことではありません。
- 腎:泌尿器や生殖器を司る。身体の成長・発育・老化のリズムと性機能をコントロールするもの。
- 肝:全身の気の巡りを統括し、精神を安定させる。血
彩り鮮やかな春の食材
春の食材で思いつくのは、こんな野菜です。
- 春キャベツ
- 新玉ねぎ
- アスパラガス
- タケノコ
- グリーンピース
スーパーでもよく見かけるようになりました。
その中、皮付きのタケノコを見つけたので、茹でて「タケノコご飯」を作ることにしました。
タケノコは、旬でいただける期間が短い食材の一つです。
成長が非常に早く、10日程で竹になる事から「筍」という漢字がついているそうです。
繊維質豊富な事から便秘解消や、痰を無くしたり排出するなど、体内の毒素を排出する働きがあります。
タケノコを茹でる
タケノコを茹でるために必要なのは「米ぬか」です。家に米ぬかがない場合、米のとぎ汁を代用することができます。あと、唐辛子もあれば使うといいようです。
【下準備の手順】
- 流水でタケノコ土を洗い落とす
- 穂先を5~6cmを切り落とす
- 繊維に沿って (縦に) 2~3cm深さの切れ目を入れる
- 鍋にタケノコを入れ、たけのこがかぶるくらいの「ヌカと水」もしくは「米のとぎ汁」を入れる
- 赤唐辛子を加え、強火にかける
- 沸騰したら落とし蓋をして、吹きこぼれないよう注意しながら、弱火で1時間~2時間茹でる
※茹で時間はたけのこの大きさによって変わります。
根元の太い部分に竹串を刺してみて、スッと通るようになったらOKです。
火を止めて、鍋に入れたまま (湯止め) 冷めるまで置きます。
落し蓋がなかったので、アルミホイルを少しクシュクシュとして、落し蓋代わりにしました。
ポイント
湯止め 湯止めの目的は、たけのこからアクを出しきること。流水で冷やしてしまうと、アクがしっかり抜けません。
タケノコが完全に冷めたら、水洗いして、縦に入れた切れ目から指先を入れて皮をむきます。穂先の皮 (姫皮) の部分もやわらかくておいしいので、残しておきました。ない、タケノコは、穂先から真ん中の部分は縦に切り、根元は横に切るといいそうです。
タケノコの保存
保存するときは、フタつきの深めの保存容器に水を入れ、タケノコが完全に浸る状態でフタをして冷蔵庫で保存します。
時々水を替えながら水に浸けておけば、1週間程度は保存可能だそうです。
一方、刻んで薄味で下煮しておくと、日持ちするだけでなく、さまざまな料理にアレンジできて便利です。
簡単!タケノコご飯
タケノコが茹で上がったら、あとは簡単!料理に使います。
炊飯器に、お米と調味料(醤油とみりん各大さじ2と1/2)を先に加え、次にだし汁を2合の目盛まで注ぎ入れます。
さっと全体を混ぜ合わせてから、炊飯器のスイッチを押すだけです。
私が参考にさせていただいたレシピでは、「お米を炊くときにタケノコも一緒に入れる」と書かれていたのですが、タケノコのシャキシャキ感を残したかったので、ご飯が炊きあがって、蒸らしの時間にゆでたタケノコを加えました。
タケノコごはんには、グリンピースも入れ、最後に大葉を添えました。
サーモンを焼き、春キャベツとアスパラガスもごま油でさっと炒めて添え、我が家の春の薬膳のできあがりです。
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さいごに
正直、皮付きのタケノコを茹でるのが、こんなに時間がかかるとは、知りませんでした。
でも、タケノコが茹で上がる間、家の中に糠 (ぬか) の柔らかな良い香りが広がり、とても幸せな気分になりました。
そして、茹でたてのタケノコがこんなに美味しいモノとは知りませんでした!
ぜひ、旬のタケノコを楽しんでくださいね。
最後までご覧いただきありがとうございます。