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12月のフランス旅行は、久しぶりだったので、有名な観光地や美術館を中心に回ってきました。
ルーブル美術館の後に立ち寄ったのは、オルセー美術館。こちらも「パリ・ミュージアムパス」を持っていれば、待ち時間なく入場できました。しかも、予約不要です。
今回は、オルセー美術館の情報と、こちらで見たかったゴッホの絵画をメインに、見どころをご紹介いたします。
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オルセー美術館
オルセー美術館は、パリ市7区のセーヌ川左岸アナトール・フランス河岸にある美術館です。
ルーブル美術館に次ぐパリの人気美術館で、3万5000m²もの敷地内には、ゴッホ、セザンヌ、モネ、ルノワールなどの有名な画家の作品が常時約4,000点も展示されています。
しかし、展示品だけでなく、建物自体も見どころとなっています。
元は、どんな場所だったかお分かりになりますか?
オルセー美術館の建物は、元は鉄道の駅舎だったのです。
パリの街に初めて鉄道が開通したのは1837年。こちらの駅舎は、1900年に開催されたパリ万博に向けて造られました。石造りの外観の内部は、アーチを描く鉄とガラスで造られた広い天井、そして装飾が施された壁面。駅としての機能を果たしたのは40年足らずでしたが、『まるで美術館のように美しい』と当時から言われていたそうです。
1980年には、この石造りの外観をそのまま生かして、印象派を中心とした美術館として生まれ変わりました。これが現在のオルセー美術館です。
美術館に生まれ変わった内部は、プラットホームの部分に地上階部分を造り、大時計はそのままに当時の雰囲気を残しています。
地下階部分は、RER(高速鉄道)の Musée d'Orsay 駅として使われています。
ホームの柱の彫刻など、建物だけでも見ごたえ十分です。
館内は、0階(地上階)、2階、3階、4階、5階の5つのフロアで構成されています。
そのうち作品が展示されているのは、0階(地上階)、2階、そして5階の3つのフロアで、3階と4階は中継階となっています。
中継階は、昔の駅舎そのままの枠組みが残されています。廊下にはガラスの床もあり、パリの街なみ(模型)を上空から見られるような仕掛けもありました。
アクセス
オルセー美術館へ公共交通機関でアクセスする方法は、メトロ・RER(C線)・路線バスの3通りがあります。
どの方法でもアクセスしやすく、周辺には他の美術館もあるので、美術館のはしごもできます。
メトロ
最寄り駅:12号線の「Solférino 駅」
徒歩で3分ほど
RER
最寄り駅:C号線「Musée d’Orsay(ミュゼ・ドルセー駅)」
エントランスまでは徒歩約1分
RERのC号線なら、ヴェルサイユ宮殿に行った帰りにも寄ることができます。
路線バス
63, 68, 69, 73, 83, 84, 87, 94 を利用して「Henry de Montherlant」などで下車。
エントランスまでは徒歩1~2分
グーグルマップで検索すると、一番便利な路線バスの経路が表示されます。
私は、ルーブル美術館からバスで行きました。
バスだと、オルセー美術館が見えてきたら降りればいいので、分かりやすかったです。
オルセー美術館はセーヌ川に位置しているので、ルーブル美術館から橋を渡って徒歩で来ることもできます(徒歩約15分)。
なお、メトロ・RER・路線バスは、navigo が使えます。
navigo については、こちらをどうぞ。
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エントランス
オルセー美術館のエントランスは、(セーヌ川を背に立った場合)建物の一番右にあります。
アルファベットで分類されており、チケットや予約の有無によって入り口が違います。
- A:当日券を購入するための一般入場口(individual visitors)。ピークシーズンなどはかなり待ち時間が発生。
- B:グループや団体客専用の優先入場口(時間指定あり・なしの2列あり)。
- C:パリ・ミュージアムパスや、WEBでチケットを事前購入している方の優先入場口。
- D:学生団体専用の優先入場口。
パリ・ミュージアムパスを持っている場合、スタッフの方に「パリ・ミュージアムパス」を提示して、一番奥の「C」の「時間指定なし」から入ります。
「C」には時間指定ありの列もあるのですが、途中割り込みする形になり(自分で割り込まないといけないので)ちょっと気まずかったです。
なお、どの入口から入場しても、館内に入ってすぐにセキュリティチェックがあります。
セキュリティチェック通過後にスタッフの方に「パリ・ミュージアムパス」を見せると、空いているブースを案内してくれて、スイスイ入場できました(たまたまかもしれませんが)。
営業時間と混雑状況
詳細 | |
---|---|
営業時間 | 【火】 ・10.00am - 5.00pm 【水、金、土、日】 ・9.30am - 6.00pm 【木曜日】 ・9.30am - 9.45pm |
休館日 | 毎週月曜日、5月1日、12月25日 |
入場料 | ・14.0 €(現地購入) ・16.0 €(オンライン購入) ※ 18歳未満は入場無料。 ※ 毎月第1日曜日は入場無料。 ※ 毎週木曜日は18時以降、他の曜日は16時30分以降特別割引 |
2023年現在、火曜日だけ例外的なスケジュールとなっていました(今後変更の可能性もあり)。
最終入場は、閉館の45分~1時間前くらいなので、余裕をもって来館することをおすすめします。
ストライキの影響
ところで、フランスを観光するときに注意しておきたいのがストライキによる影響です。今回は大きな影響はありませんでしたが、情報だけは早めに入手するようにしました。
ストライキに関する情報は、オルセー美術館のの公式サイトに掲載されます。
Due to the national strike, we cannot guarantee that the museum will be fully or partially open on Tuesday, February 7 and Saturday, February 11. In any case, the museum will close at 5pm (last access 4pm).
【公式】オルセー美術館
【大意】国内のストライキにより、オルセー美術館の営業が変更される場合があります。ストライキが実施される場合、2月7日(火)と2月11日(土)の閉館は午後5時(最終入場午後4時)となります。
公式サイトに情報は出ますので、何かあった場合は(行く前に)公式サイトを確認されることをおすすめします。
混雑状況
月曜日が休館日ということもあり、 前後の日曜日と火曜日は特に混雑するようです。比較的空いているのは、水曜日と木曜日の18時以降、もしくは金曜日だと言われています。
当日の混雑状況(エントランスA)は、オルセー美術館公式サイトの 〔Waiting Time〕でチェックしてみてくださいね。
オルセー美術館は、ルーブル美術館と違って、下調べなく、ふらっと立ち寄っても十分に楽しめる美術館です。
パリ・ミュージアムパスを持っていれば、待ち時間なく入場できます。その場合、ゆっくり館内をまわっても、2,3時間あれば見学(休憩を含む)できると思います。
また、時間がない方は、どんな作品があるか調べてから行ってもいいかもしれませんね。
- オルセー美術館の作品はこちら >>> collections
オルセー美術館のまわり方
オルセー美術館には、名画や有名な展示品がたくさんありますが、特に、印象派やポスト印象派の作品が多く展示されています。
印象派とは19世紀ごろに起きた芸術運動です。それまで屋内で描くことが常識とされていた画風が、 屋外で目の前の風景などを描くスタイルに変わり、鮮やかでラフなタッチが特徴となりました。
今回は、以下の順序で回りました。
- 絵画や大時計を鑑賞(5階)
- カフェで休憩
- 彫刻鑑賞(2階)
- 絵画と彫刻鑑賞(0階)
なお、お天気が良い日は、5階のテラスが開放されている場合もあります。
案内所でパンフレットをもらったら、すぐそばのエスカレーターで5階に行きましょう。
5階から
5階には、印象派のルノワール、セザンヌ、そしてポスト印象派のゴッホやゴーギャンなど有名な絵画が集まっており、絶対に見逃せない場所です。
- 【29〜37】印象派と新印象派:モネ、マネ、ルノワール、ドガ、セザンヌ、ピサロ、シスレー、スーラ、シニャック
- 【38〜40、42〜45】ポスト印象派:ベルナール、ゴーギャン、ルドン、セリュジエ、ゴッホ
- 【41】グラフィック・アート
- 【46】ル・シャ・ノワール
- 【47】シネマ (1895-1914)
館内はライトなども工夫されており、印象派特有の色調が目立つようになっています。
※ 作品の展示場所は変わる可能性があります。最新情報はオルセー美術館に置かれている「館内マップ」をごらんください。
ゴッホ
オルセー美術館で一番楽しみにしていたのは、Vincent van Gogh (ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ) の絵画です。
ゴッホは、1853年にオランダ南部の村フロート・ズンデルトに生まれました。最初から画家だったわけではなく、画商や伝道師を経て、27歳のときに弟テオ(テオドルス・ヴァン・ゴッホ)の勧めで画家を目指しました。
1886年、33歳のとき、パリに住むテオの元に転居し、その間に印象派の画家と知り合い、浮世絵と出会い、色彩に目覚めていきます。現在ではポスト印象派をけん引した巨匠と言われているゴッホですが、生前に売れた絵は1点だったそうです。
生涯多くの自画像を残しているゴッホですが、オルセー美術館には、最後に描かれた自画像(1889年)が展示されています。この作品はゴッホがサン・レミの病院にいた時に描いたもので、その背景には、ゴッホの晩年の作品の特徴である渦巻模様(うねり)がゴッホと同化するかのよう描かれています。
ゴッホの心の不安定さを感じる絵ですが、淡い背景の中の強烈なまなざし。彼が生きていた証のようなこの作品に、理由もなく惹かれるのです。
ところで、ゴッホの代表作と言えば、多くの方が ≪ひまわり≫ を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、オルセー美術館には ≪ひまわり≫ がありませんでした(2022年12月時点)。
ゴッホは、ひまわりの他にもアイリスや夾竹桃(きょうちくとう)、そしてバラなど多くの花を描いており、オルセー美術館には、1887年に描かれた ≪銅の花器のフリティラリア(オウカンユリ)≫ が展示されていました。
この絵が描かれた1887年頃は、パリ万国博覧会などをきっかけにパリの美術界にはジャポニズム旋風が吹き、ゴッホも歌川広重などの浮世絵を模写し日本の美意識に魅了されていきました。自由に描ける花や木々は、色彩表現を模索し続けるゴッホにとって、格好の題材だったのでしょうね。
ゴッホは、画家のミレーを最も尊敬しており、20点以上もの模写をしています。
上の絵も、ミレーの ≪昼寝≫ を模写したものです。ゴッホの特徴であるうねり・渦巻はあまり見られません。
黄色だけで何かを表すのは難しいそうですが、巧みな技術で麦わらや田園風景を表現しています。また、青と黄色など正反対の色を並べると、互いの色をより鮮やかに見せる効果があると言われていますが、この絵でも、黄色い風景の中に見られる薄い青の農民と空が印象的です。
≪コルドヴィルの藁葺き屋根の家≫ は、オヴェールの村はずれの農家の風景を描いた作品です。
晩年の他の作品と同様に、空、建物、草木まで全てが力強い渦巻模様(うねる曲線)で描かれています。大地からなにか大きな力が持ち上がり、木々に伝わり、渦巻き模様の雲に繋がっているように見えました。実際には見えない力ですが、ゴッホの目には、藁ぶき屋根とこののどかな風景もこのように映っていたのでしょうか。
オヴェールという街 は、パリの北西にあり、ゴッホが人生の幕を閉じた場所でもあります。
この ≪オーヴェルの教会≫ からは、ゴッホの晩年の作品の特徴である "うねり" が見られます。
村の教会の、より大きな絵を私は持っている。建物はスミレ色に染まり、空のシンプルな深い青の色、純粋なコバルト色によく映えている。窓のステンドグラスは群青色のシミのように見え、屋根は紫色で一部がオレンジ色をしている。前景には、緑色の植物少々が花開き、砂は、ピンク色の日光を浴びている。私がニューネンで、古い塔と墓地を描いた習作とほぼ同じ内容で、ただほんの少し色彩豊かで金がかかっているというだけである。
オーヴェルの教会-wikipedia
説明を読む前は、月明かりの元に照らし出されている教会だと思ったのですが、昼間のようです(そういえば星がない・・・)。
《オーヴェールの教会》の前景は太陽によって明るく照らされていますが、教会自体は自らの影の中にあります。ゴッホが教会に光を当てていないのは、過去にプロテスタントの牧師になろうとして挫折した経験が背景にあるのではないかと、言われているそうです。
(私事ですが)実は、ゴッホはあまり得意ではなかったのです。
しかし、コロナ禍で出掛けたロンドン・ナショナル・ギャラリー展で ≪ひまわり≫ のイエローマジックに関する解説を読んでから、じっくり見るようになりました。難しいことは分かりませんが、私は、ゴッホの「色」を楽しんでいます。
なお、5階には、ゴッホ以外の作品も充実しています。
ゴーガンの ≪タヒチの女たち≫
ロートレックの作品群。
ルーブル美術館に比べるとこじんまりしている美術館ですが、見ごたえのある作品が揃っていて、大好きな場所の一つです。
2階
2階には彫刻が並んでいます。
オルセー美術館には、オーギュスト・ロダンのオリジナル石膏原型 ≪地獄の門≫ があります。
2022年に解体され、現在の位置に移動されたようです。
よーく見てみると、切れ目が入っていました。
ロダンは、『地獄の門』から、気に入った像を独立した作品にしました。 ≪考える人≫ の拡大像や縮小像も作られ、世界中に ≪考える人≫ が存在することになりました。
0階
0階(地上階)は、中央通路に1850年から1880年制作までの彫刻が並んでいます。
その通路の両側に絵画展示室があり、エドゥアール・マネの ≪笛を吹く少年≫ や ≪ローラ・ド・ヴァランス≫ などの名作が飾られています。
ムンク
ちょうど、エドヴァルド・ムンクの特別展が開催されていました。
ムンクは、19世紀から20世紀にかけて活躍した、ノルウェー出身の画家です。≪叫び≫ の作者として世界的に有名ですが、それ以外の作品を見る機会はあまりなく、とても興味深かったです。
≪Summer in the Park≫ は、普段はノルウェー・オスロのMunch Museum(ムンク美術館)に展示されている作品です。知らなければ、絶対にムンクだとは気づかないと思いました(←私だけ?)。
レストラン・カフェ
ところで、オルセー美術館内もあちこちにベンチがあり休みながら鑑賞できますが、館内のレストランやカフェもおすすめです。
レストラン・ミュゼ・ドルセー
オルセー美術館の中にある、「レストラン・ミュゼ・ドルセー」。
宮殿の中のように豪華な天井画やインテリアで、店内は華やかに装飾されています。
一見高級レストランの雰囲気なのですが、意外にも 料金は比較的リーズナブル です。フレンチのコース料理をいただけ、ひとりでも気兼ねなく入ることができます。
カフェ・カンパーナ
オルセー美術館内5階にある「カフェ・カンパーナ」は、ブラジルの有名なデザイナー「カンパーナ兄弟」によって設計されたカフェです。駅舎のシンボル・大時計の裏側に位置しています。時計裏(カフェ内)からは、モンマルトル地区にあるサクレ・クール大聖堂が見えました。
食事をしなくても飲み物だけでも注文可能です。なので、ちょっと疲れたときに立ち寄るのもいいかもしれませんね。
なお、ご紹介したレストランやカフェは混雑していることが多いので、入れない場合は、0階奥にあるカフェもおすすめです。
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さいごに
今回は、パリ・ミュージアムパスを利用して行ったオルセー美術館の概要と、ゴッホの作品をメインにご紹介いたしました。
オルセー美術館に展示されている作品は、1848年の二月革命から1914年(第一次世界大戦が勃発)までです。決して大きな美術館ではありませんが、見ごたえのある作品が揃っています。それ以外にも面白い趣向の展示品もあり、何回行っても楽しめ、新しい発見のある場所です。
なお、1848年以前の作品はすぐそばにあるルーブル美術館に展示されています。なので、2つの美術館をはしごしてお楽しみください。
今回、パリ・ミュージアムパス(2日間)を使ってまわった観光地・美術館はこちらです。
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