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ロンドン・ナショナル ギャラリー
ヨーロッパの多くの美術館は、王族の収集作品が基となっています。
しかし、ロンドン・ナショナル ギャラリー (the National Gallery) は、1824年に銀行家 J・J・アンガースタイン氏が所有するラファエロなど38点の絵画を国が買い取ったことが始まりです。そして、実業家や市民収集家らの寄贈によって、作品群を充実させてきました。
13世紀~19世紀頃までの作品2,600点以上を所蔵しており(2024年5月現在)、ヨーロッパならではの宗教画からミケランジェロやラファエロ、印象派を代表するセザンヌ、モネ、ゴッホなどを無料で鑑賞できる稀有な場所です。
1838年には、ナポレオン戦争に勝利したネルソン提督を記念して造られた、ロンドン中心部のトラファルガー広場に移転しました。
詳細
・開館日:毎日(閉館日:1/1.12/24-26)
・開館時間:10:00-18:00(金曜のみ21:00まで)
・入場料:無料(寄付が望ましい)
アクセス
ロンドン・ナショナル ギャラリーは市内の中心部にありますので、地下鉄やバスで簡単に行くことができます。
地下鉄
最寄り駅は地下鉄のチャリング・クロス(Charing Cross ) 駅
チャリング・クロス駅構内にはロンドン・ナショナル ギャラリーへの矢印が標示されているので、標示に従って進みます。
また、バスでも簡単にアクセスできます。
ギャラリー周辺にはバス停がたくさんあります(見にくい写真ですみません)。
どこから出発するかによって利用するバスは違うと思いますが、Citymapper という無料アプリで簡単に検索できます。
Citymapperの使い方はこちらをどうぞ。
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ロンドンの多くのバスは2階建てで、前乗りです。
乗るとき、オイスターカードやタッチ決済機能の付いたデビットカードやクレジットカードを読み取り機にタッチします。タッチしても音は鳴らないのですが、思っていたより反応はよかったです。なお、ロンドン市内は一律運賃なので、降機時には車内のブザーを押し、真ん中のドアから降りるだけです。
美術館の入口
ロンドン・ナショナル ギャラリーの入口は何カ所かあります。
トラファルガー広場を背にした左側の「セインズベリー・ウィング入口」に列ができていたので、そこから入りました。右側に「ゲティ入口」がありますが、この時は出口専用になっていました。なお、広場とは反対側には「ピゴット・エデュケーションセンター入口」もあります。入り口付近には案内版やスタッフの方がいるので、どこから入るかはすぐに分かると思います。
平日のお昼過ぎに行ったとき、荷物チェックのための入場制限が行われており、入場までに少し時間がかかりましたが、予約なしで入ることができました。
荷物
各入場口では、スタッフによる荷物検査が行われています。
館内にはクロークルームが2か所あります。ナショナル ギャラリーに持ち込める荷物のサイズは、45cm×25cm×25cm以内です。この範囲で大きな荷物がある場合は、預けて身軽になって観覧しましょう。
館内へ
ロンドン・ナショナル ギャラリーの所蔵品は、時々海外へも貸し出されているため、お目当ての作品が展示されていない場合もあります。
幸い(事前に公式サイトでチェックしてみると)、一番見たい作品は展示されているようでした。はやる気持ちを抑えつつ、ゆっくり階段を上って展示室へ。
その前に・・・
あまり注目されていませんが、中央のホールへ続く階段を上ったところの床のモザイク画にもイギリスらしいものがあります。イギリスの美術館は展示物だけでなく建物内部も見どころがたくさんあるので、展示品以外の楽しみもありますね。
館内マップ
適度な広さの美術館ですが、事前に館内マップを入手しておくと、初めてでも、見たい作品に簡単にアクセスできると思います。
ロンドン・ナショナル ギャラリーの公式サイトは、訪問者にとって役立つ情報がちりばめられており、英語ですが(パソコンの翻訳機能を使えば)簡単に操作できます、館内地図についている番号をクリックすると、見逃したくない作品が表示されます。
- 館内マップ >>> ロンドン・ナショナル ギャラリー
なお、スマートフォンでも(上のように)必見の展示品は見ることができるので、現地でも簡単に探すことができました。
must see
2階のメインフロアギャラリーは、中央ホールの左右に展示室が広がっています。どちらから進めばいいかの迷いますが、どちらに行っても大丈夫です。左右どちらかの作品を鑑賞したら、中央ホールに戻り、反対側に進めば両方ともくまなく見ることができます。
以下、おすすめの絵画を何点かご紹介いたします。
刺繍枠を前にするポンパドール夫人を描いたドルーエ-フランソワ‐ユベールの作品です。
この絵は、ルイ15世のかつての愛人の姿だそうです。
1721年にジャンヌ・アントワネット・ポワソンとして生まれ、1741年に結婚し、4年後に愛人となり、ポンパドゥール侯爵夫人となったそうです。彼女は芸術と文学のパトロンであり、ファッションリーダーでもありました。長方形のキャンバスに描かれた頭部は実物から取られたもので、残りはポンパドゥール夫人の死後に完成したと言われています。
ぜひ、近づいて見てみてください。ドレスのレース細部までの緻密な筆遣い。
難しいことは分かりませんが、しばらく見とれてしまいました。
ジョージ・スタッブスの ≪ホイッスルジャケット≫
1762 年頃に英国の画家ジョージ スタッブスが描いた作品です。ほぼ等身大(と言われている)のロッキンガム侯爵の競走馬を、躍動感たっぷりに描いています。
≪アンドリューズ夫妻≫ は、トマスゲインズバラによる1750年頃の油彩画です。今日では彼の最も有名な作品の1つと言われています。
≪アニエールの水浴≫ は、フランスのポスト印象派の画家ジョルジュ・スーラが描いた作品です。
≪イネス・モワテシエ夫人の肖像≫ は、1856年にフランス新古典主義の巨匠ドミニク・アングルの作品です。
上記でご紹介した作品は、公式サイトがおすすめしている " must see (必見) " のものです。時間がない方は、これらの作品を中心に見るのもいいかもしれませんね。
must see >>> 【公式】ナショナルギャラリー Our must-see paintings
≪大使たち≫
さて、今回どうしても見たかった個人的なmust seeをご紹介いたしますね。
まずは左の「展示室12」から回ることにしました。展示室12~14には、1500~1600年の作品(ティツィアーノ、ホルバイン、ブロンズィーノ、マセイス、ヴェロネーゼ)が並んでいます。
なお、≪大使たち≫も公式サイトの must see の作品の一つです。
1533年に描かれたホルバインの ≪The Ambassador:大使たち≫ 。豪華な衣装をまとった等身大の2人の若者が描かれています。2mを超える大きな絵で、迫力があります。
左は、フランス王フランソワ1世からイギリス王ヘンリー8世の宮廷に派遣された大使でポリジーの領主ジャン・ド・ダントヴィル。そして、右は、ド・ダントヴィルの旧友でラヴォールの司教ジョルジュ・ド・セルヴ、大使としても多くのヨーロッパ諸国に派遣された方だそうです。
この絵画は人物以外にも注目点が多い作品です。
2人の間に置いてあるのは、数学天や文学、地理学、音楽を表すモチーフで、これらを散りばめることで、2人の高い教養や知性を表しているそうです。中央右側にある「リュート」という楽器は、よく見ると弦が1本切れています。これは、はかなさを表し、当時のカトリックとプロテスタントとの宗教的な不和を表しているとか。
さらに下部に目を移すと、モザイクの床が描かれています。この床は、ロンドンのウェストミンスター寺院のモザイク模様の床に似ていることから、イギリスの国教会の独立を暗示していると考えられています。
そして、一番のみどころ!
モザイクの床の左前に何かが描かれています。この部分を左側から見ると、骸骨が現れるのです。小学生の頃に初めて(百科事典で)この絵を見て衝撃を受けたのですが、以来、いつか本物を左側から見たいと思っていた仕掛けです。これは「アナモルフォーズ(ギリシャ語:再び(ana)形作る(morpho)」という歪んだ遠近法による技法で、16世紀のヨーロッパで流行したそうです。ちなみに、この技法を発明者したのは、レオナルド・ダ・ヴィンチだと言われています。
この絵は、人間の栄光も英知もはかないものだという戒めを表しており、メメント・モリ(ラテン語: memento mori)、「(可能性に満ち溢れていても)自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」といった意味が含まれているそうです。さらに、よく見ないと見落としてしまいそうなカーテンの左上の隙間に「キリストの磔刑像」が描かれています。これによって、死後の永遠の世界という救いが示されています。
公式サイトでは、実際の絵画を見ることができ、画面をスクロールさせながら拡大すると(骸骨は浮かび上がりませんが)細部まで確認することができます。
>>> ≪大使たち≫
西洋絵画の流れ
ロンドン・ナショナルギャラリーでは、その網羅的なコレクションの特徴を活かし、ルネサンス以降の西洋美術史を7つの章を追うことで一望できる仕組みになっています。
ルネサンス以前
ルネサンス以前は、自分の描きたいものを自由に描くことができず、王様や貴族から頼まれて、偉大さを表現するような肖像画や神話の一場面を描いていました。また、聖職者や学者など一部の人しか読むことができなかった聖書を、民衆に分かりやすくするため、教会が依頼することもありました。
ルネサンス以前の絵画には、以下のような特徴(一部)があります。
- キリスト教関連の作品が中心(教会や聖堂の建築や聖書の挿絵)
- 作品は2Dで、真顔で固定されたポージング
- 背景の空間は描かれないことが多かった
ルネサンス
14世紀になると人間をもっと人間らしく描こうという気運が高まり「ルネサンス」という文化運動が起こります。
この運動を支えたのが、銀行業で財をなしたメディチ家という実業家一族です。
マリアの表情もより人間的に、また絵画自体も立体的に描かれるようになりました。
イタリア・ルネサンス
展示室15では、19世紀にイギリスで再評価されるまで見逃されていた初期ルネサンスの画家、クリヴェッリの作品を見ることができます。クリヴェッリは、イタリア・ヴェネチア生まれの流転の画家です。
1486年に描かれた ≪The Annunciation, with Saint Emidius:聖エミディウスを伴う受胎告知≫ 。
画面の手前に描かれているのは、新約聖書のエピソードの一つである「受胎告知」の場面です。処女マリアの前に神の使いである天使のガブリエルが降りたち聖霊によってキリストを妊娠したことを告げ、 マリアがそのことを受け入れる有名なシーンです。
マリアの表情が柔和ですよね。
さらに、正確な遠近法で描かれているため、建物の精妙な装飾や絵画から飛び出す果物が見事に表現されています。
鑑賞ルート
ところで、美術館に行くと、どこから回ったらいいのか迷われた方も多いかと思います。せっかく来たのだからいろいろ見たいと思って、つい無駄に歩いてしまいただただ疲れてしまう(←私・笑)。
しかし、ロンドン・ナショナルギャラリーは適度な広さ、かつ中央のホール(Cantral Hall)の左右に展示室が広がっているので、あまり迷うこともないと思います。
今回は、展示室12へ進み、⑪→⑨→⑰・・・と移動してみました。展示室11に立ち寄ったのは、17a の絵画と比較したかったからです。
≪聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ≫
展示室17aには、1枚だけ暗い中に飾られているカルトン(下絵)があります。それは、1499-1500に描かれた ≪The Burlington House Cartoon:聖アンナと聖母子の画稿≫ 、ルネサンス期のイタリア人芸術家レオナルドダヴィンチの作品です。
貼り合わされた8枚の紙に木炭や白黒の チョーク で描かれているこの作品は、聖アンナの膝の上に座る聖母マリアの姿勢の不自然さが論じられてきた作品です。聖母マリアはよっぽど腹筋が強いのか・笑。中央には幼子キリスト、右下に洗礼者ヨハネが描かれています。
解説には、「この下絵は、普通はコンパスなどを刺した針孔ができているのだが、これにはついていなかったので、これはこれで完成した作品とみなされていた可能性がある」と書かれていました。
ところで、ロンドン・ナショナル・ギャラリーの展示室11には、同じくダ・ヴィンチの作品 ≪The Virgin of the Rocks:岩窟の聖母≫ も飾られています。≪The Virgin of the Rocks≫ は、ほぼ同じ構図と構成で描かれた2点の作品があり、一つはパリのルーブル美術館、そしてもう一つがこのロンドン・ナショナル・ギャラリーに所蔵されているものです。
The Virgin of the Rocks
どちらも聖母をモデルにしていますが、展示室9にあったこちらの ≪The Virgin of the Rocks≫ の女性は無表情です。一方、17aに飾られているカルトンの聖母マリアと聖アンナのどちらも優しい愛情に溢れた表情をしており、かなり違った印象を受けました。個人的な推測ですが、時代というより、前者は依頼主(教会)の要望によるもの、後者はより自由に描ける状況にあったからなのでしょうか。
≪アルノルフィニ夫妻の肖像≫
15世紀の半ばから、ヨーロッパでは大航海時代が始まり、貿易で成功した商人が登場します。
こちらは、北ヨーロッパの偉大な画家と言われているヤン・ファン・エイクの ≪The Arnolfini Portrait:アルノルフィニ夫妻の肖像≫ (1434年)です。
この絵はヤン・ファン・エイクの友人で、当時大商人であったイタリア人結婚記念に描かれたものです。そのため、作品のなかには結婚を象徴するものがちりばめられています。左手で妻の手をとり、自身の右手を上にあげるポーズは当時の結婚の宣誓を表しており、2人の間にいる犬は、忠誠のシンボルで、夫婦間の信頼と妻から夫への貞節を表しているそうです。
ヤン・ファン・エイクは、髪の毛や顔のしわの細部までリアルに描くだけでなく、それらに当たった光の影まで緻密に描いており、その観察力と描写力が高く評価されている作品でもあります。
オランダの画家
ところで、17世紀に入ると海洋大国オランダの繁栄が始まり、オランダ絵画の黄金期を迎えます。ロンドン・ナショナルギャラリーにも、地理的にも近いオランダの画家・フェルメールやレンブラント、ゴッホの作品が多く展示されています。
フェルメール
1672年に描かれた、フェルメール(当時40歳)の作品 ≪A Young Woman seated at a Virginal:ヴァージナルの前に座る若い女性≫です。
海洋大国として繁栄していたオランダでは、裕福な市民が家に飾るための絵画を画家に求めました。光の魔術師と呼ばれるフェルメールの作品は、そのような背景から誕生しました。
特に注目したいのが「音楽」です。フェルメールは、全35作品中12点に様々な楽器など音楽に関するものを描いています。
このヴァージナルは、(音色は違いますが)ピアノの祖先とも言われている楽器です。ヴァージナルのそばに立てかけてあるのはヴィオラ・ダ・ガンバという楽器です。くびれのある形と美しい音色は女性の象徴とされ、男女の性愛の象徴とされていたそうです。この絵には、フェルメールが好んだ(とされている)愛の小物がちりばめられており、いろいろ想像を掻き立てられる楽しい作品です。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーには ≪ヴァージナルの前に立つ若い女性≫もあるのですが、この日は(貸出中で)見ることはできませんでした。ほぼ同時期に描かれたこれらの絵は、楽器も同じなので一対の作品ではないかという推測もあるそうです。
また、女性の背後にある絵は、ディルク・ファン・バビューレンの≪取り持ち女≫で、フェルメールの義母が所有していたものだそうです。実際の作品はボストン美術館に所蔵されています。
レンブラント
展示室24には、レンブラントの作品が展示されていました。
この中で特に惹かれたのが≪Belshazzar's Feast:ベルシャザルの饗宴≫ (1636-38年)です。
描かれているのは、父王がユダヤ人から略奪した杯を息子のベルシャザルが宴で使用した際に、神の手が現れ「ベルシャザルの治世が終焉を迎える」という予言を壁に書いたシーンです。ちなみに、ベルシャザルはその夜のうちに殺され、王国はアケメネス朝ペルシアに支配されたそうです。
ゴッホ
ゴッホの ≪ひまわり≫ を見に中央のホールの反対側へ。
展示室43にあるのは、黄色い背景に15本の黄色いひまわりが描かれた1888年8月の作品です。
ゴッホの代名詞ともなっている ≪ひまわり≫ ですが、1888年2月から1年と少し滞在した南仏のアルルで描いたもので、故郷のオランダでは描いていません。
ゴーガンが来るこの年の8月までに4点の「花瓶にいけたひまわり」を完成させましたが、そのうち3点の背景は緑や青で、この1点だけが黄色となっています(1点は日本にあったが1945年の空襲で焼失)。黄色い絵の具と筆遣いだけで表現されたゴッホの ≪ひまわり≫ 何度見ても言葉にできない独特な世界にひきこまれます。
なお、完成当時ゴッホは「14本のひまわり」と手紙に書いており、左下に垂れ下がったようにいけられた一輪は(真意は不明ですが)、ゴッホが後で描き足したものだと言われています。
グランドツアー
18世紀に入ると、イギリスでは富裕層の子息をイタリアへ留学させる「グランド・ツアー」が流行り、そのお土産として、多くの景観図が持ち帰られました。
A Regatta on the Grand Canal
反対側に進んだすぐのところにある(展示室38)この≪大運河のレガッタ≫は、18世紀のヴェネツィアで最も人気のあったゴンドラレースを描いたものです。このレースは、1000年頃にダルマチア(現在のクロアチア)の軍隊に対する海戦の勝利を記念しています。
このような裕福な外国人観光客にアピールするように設計された絵画は、グランドツアー先のヴェネチアの卓越した美しさと娯楽を思い出させるものとして人気となりました。
イギリスの画家
イギリスの美術館ですので、もちろんイギリスの画家の作品も展示されています。
その中で印象に残ったのが、ジョセフ・ライトの ≪An Experiment on a Bird in the Air Pump:空気ポンプの中の鳥の実験≫です。
ロウソクで照らしたかのような明暗技法や写実的な人物描写に遠くから見てもインパクトがあります。近づくと、その緻密さにさらに心揺さぶられました。18世紀に活躍したジョセフ・ライトは、風景画だけでなく、科学技術や近代を多く描いていますが、歴史の一部を(その場にいるかにように)垣間見た気分になれるこの作品が好きです。
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印象派
最後は、印象派の画家の作品を見ていきましょう。
ルネサンスから400年以上経ったとき、パリで印象派という画家のグループが誕生しました。
印象派の画家たちは、依然として残っていた「歴史画を頂点とする格付け」にに反抗して、絵画の伝統を無視した絵を描き、個展を開きます。そんな彼らを指示したのは、パリの裕福な市民でした。
この頃になると、依頼主は裕福な市民や画商となっていきます。
展示室41には、セザンヌ、モネ、ルノワール、クリムト、といった美術の教科書でおなじみの名前がならんでいました。
女流画家
≪夏の日≫は、1841年フランスパリ生まれの女流画家ベルト・モリゾの作品です。
この作品は、フランスのパリにある「ブーローニュの森」を舞台に描かれたものだそうです。
印象派の画家のなかで2大女性画家のひとりと言われているベルト・モリゾ(もう一人はメアリー・カサット)。
柔らかいタッチが特徴の作品です。2024年6月現在、no display (貸し出し中)となっており、戻ってくるのが楽しみな作品です。なお。メアリー・カサットも舟遊びをする ≪夏の日≫ というタイトルの作品を描いており(テラ・アメリカ美術基金蔵)、舟遊びは、当時のお金持ちに人気の遊びだったようですね。
ゴッホ
日本で開催されたロンドン・ナショナルギャラリー展では、ゴッホの ≪ひまわり≫ が展示されていましたが、こちらではゴッホの様々な作品を見ることができます。
こちらは、12歳の少女の肖像画で、ゴッホが亡くなる前の10週間で描かれたものだそうです。
個人的に好きなゴッホの作品 ≪糸杉のある麦畑≫ 。サン=レミの療養院にいた頃に、南仏プロヴァンスの田園風景を描いた連作のうちの一つです。
色彩だけでなく、画面から風や香りを感じられる気がします。
ゴッホが糸杉を主題にしたのは、亡くなる前年の1889年。南フランスの町アルルで精神を患いサン・レミの療養院に入院した頃で、弟のテオへの手紙には、『もうずっと糸杉のことで頭がいっぱいだ。ひまわりの絵のようになんとかものにしてみたいと思っている』と綴られていたそうです。
ところで、糸杉は、 地中海沿岸部原産の針葉樹です。
糸杉の香り
糸杉(サイプレス)はヒノキと同じヒノキ科の植物。香りは似ていますが、サイプレスの方がよりフレッシュでグリーン調、まるで森林浴をしている感じになる。
香りを知っているので、活き活きとした糸杉から香りを感じた(気がする)のは私だけでしょうね・笑。
クリムト
クリムトはオーストリア、ウィーンを代表する19世紀の画家で、「黄金様式」と呼ばれる金のきらめく画面装飾が特徴です。
ただ、どうしてここに?と不思議に思った通路の一角に飾られていました。しかし、それでも足を止めて見入ってしまう ≪ヘルミーネ・ガリアの肖像≫ 。クリムトらしい耽美(たんび)な女性像が描かれている作品でした。
クリムトが活躍した当時の19世紀は、フランス印象派の運動が目覚ましい時代で、クリムトはその印象派の影響を受けながら、ウィーンの保守主義を打開するウィーン分離派の運動を創立したそうです。
なお、同じ展示室41には、セザンヌ、モネ、ルノワールの作品が並んでいました。
モネやゴッホなどの印象派の絵画をメインにご覧になりたい方は、展示室30-45(メインエントランスから右側)から回られるといいかと思います。
ホドラー
最後にご紹介するのは、ノーマークでしたが心揺さぶられた作品。
ホドラーの作品は、いままで意識して見たことなかったのですが、単なる風景画ではなく、山々の風景に命を吹き込んだかのような活き活きとしたアルプスの姿に感動を覚えました。
フェルディナント・ホドラー(1853-1918)は、19世紀末から20世紀初頭のスイスを代表する画家です。スイスでは「国民画家」と呼ばれているそうですが、彼の作品を国外で見られる機会は少ないのではないでしょうか。
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ミュージアムショップ
ところで、ロンドン・ナショナル・ギャラリーも入場料は無料ですが、10ポンドの寄付が推奨されています。
今回も寄付の代わりにお土産をいくつか買ってみました。
日本で開催されたロンドン・ナショナルギャラリー展でもゴッホの顔が描かれた靴下を買ったのですが、今回もゴッホの絵柄の靴下にしてみました。ちょっと足首部分がきつめですが、足元のアクセントになって可愛いので気に入っています。
なお、館内にはレストランや簡単に食事ができるカフェもありますので、ゆっくり休みながら観覧できますね。
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さいごに
世界で一番好きな美術館(同率一位はエルミタージュ美術館)なので、短い滞在日程でしたが、かなりじっくり時間をかけて鑑賞してきました。must see 以外にも新しい発見があり充実したひと時に!
ロンドン・ナショナル・ギャラリーのような市民の手による美術館は、アメリカのメトロポリタン美術館や日本の国立西洋美術館のローモデルにもなっているそうですよ。ロンドンに行かれたら、ぜひ足を運んでみてくださいね。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。