蒸し蒸しする梅雨の時季、気持ちだけでなく体も重くなった気がします。
この梅雨の時季をスッキリ元気に過ごすには、食生活を整え、胃腸を元気にすることが欠かせません。
旬を迎えた「とうもろこし」。美味しいだけでなく、この時季の体調管理に最適な食材でもあるのです。
今回は、薬膳と梅雨の時期におすすめしたい食材「とうもろこし」のレシピをご紹介したいと思います。
梅雨の時期の薬膳
薬膳とは、中医学 (中国伝統の医学) に基づいて作られた食事のことです。
中医学の考えでは、人間も自然の一部として存在し、互いに関連しながら影響しあっています。
私達人間の活動が自然に影響を及ぼすように、四季の移り変わりや気候の変化も私達の健康に様々な影響を与えるのです。
中医学では蒸し暑い季節を「長夏」と呼びます。日本では「梅雨」がこの気候に当てはまります。
この蒸し暑さは脾 (ひ) に影響を及ぼし、体に痰湿 (たんしつ) を生みます。
脾 (ひ)とは?
中医学では、「脾」は、西洋医学の「脾臓」とは生理機能が全く異なっており、体の元気を作ったり、水分代謝を促す役割をしていると考えられています。
「脾」は、「胃腸」と訳されることがあります。
脾(胃腸)の働きが悪くなると、下痢や食欲不振、疲れやすい、むくみ、尿の量が少なくなる、倦怠感などが起こると言われています。
また、「痰湿」とは、体の中の水分が過剰になっている状態でを指します。
体に必要なうるおいを補う水ですが、その 水の巡りがいったん滞ると、体にとって有害な物質へと変化してしまいます。
湿気の多い日は洗濯物が乾きにくいように、梅雨の時期は体の中にも湿気が溜まりやすく、痰湿の症状も出やすいそうです。
元気な方でも、冷たいものを取りすぎることで痰湿を生むことがあります(専門的には「内湿」といいます)。
梅雨の時季は、乱れた食生活を続けた結果不調を起こす、あるいは内湿によって胃腸が弱っている時に湿気の多い時季が重なり不調が生じる、そういう悪循環が起こりやすいのです。
胃腸を弱らせる食べ物?
アイスクリームやかき氷、刺身や生野菜などの「冷たいもの」だけでなく、甘いお菓子や砂糖たっぷりの飲み物なども、胃腸を弱らせる食材も胃腸を弱らせるモノだと言われています。
ということは、梅雨の時季をスッキリ元気に過ごすには、「冷たいもの」や「甘いもの」を控えるといいようです。
「痰湿」を除くには、胃腸を弱らせる食べ物・飲み物を控えたうえで、体内の水分代謝をよくする食材を積極的に摂るといいようです。
水分代謝をよくする食材
水分代謝をよくする食材
- 昆布、わかめ
- たけのこ、ごぼう
- レタス、白菜、大根、ほうれん草
- 玄米
- 長いも、冬瓜、とうもろこし
- 大豆、小豆、枝豆、黒豆、ハトムギ
- はまぐり等
これらの食材を、温かい味噌汁やスープなど加熱して摂ることがいいようです。
今回は、上で示した食材の中から、旬を迎えた「とうもろこし」に注目してみました。
とうもろこし
とうもろこしには、甘味種のスイートコーンや、ポップコーンの原料になる爆粒種、主にコーンスターチなどでんぷんを利用する穀物種など、さまざまな品種があります。
ここではスイートコーンについて取り上げます。
原産地起源
とうもろこしの原産地起源は明らかではありませんが、有力な説として、今から5,500年から7,000年くらい前のメキシコ、ボリビアなどの中南米付近と言われています。
とうもろこしが世界に広まったのは、15世紀末にコロンブスがアメリカ大陸からスペインへ持ち帰ったのがきっかけとされ、日本へは1579年にポルトガル人が伝えたのが最初です。
その後、明治時代に入ってアメリカから種実 (しゅじつ) を導入し、北海道で栽培されるようになり、全国に普及しました。
とうもろこしの栄養
とうもろこしは、美味しいだけでなく栄養も豊富です。
身体のエネルギーになる炭水化物を主として、ビタミンB1、B2、Eなどのビタミン群、リノール酸、食物繊維、そしてカルシウム、マグネシウムなどの各種ミネラルをバランスよく含んでいます。
可食部100gあたりの成分
状態 | エネルギー | 水分 | たんぱく質 | コレステロール | 食物繊維 |
---|---|---|---|---|---|
生 | 92 kcal |
77.1 g |
3.6 g |
0 mg |
3.0 g |
茹で | 99 kcal |
75.4 g |
3.5 g |
(0) mg |
3.1 g |
電子レンジ調理 | 107 kcal |
73.5 g |
4.2 g |
0 mg |
3.4 g |
参照:旬の食材百科
とうもろこしのカロリーは、1本(150g)あたり138kcal。可食部100gのカロリーは、92~107kcalとなっています。
私はいつも電子レンジで加熱していたのですが、流れ出す部分がないため、茹でるよりカロリーが高くなるようです。
コレステロールがゼロ!しかも、食物繊維が多いため、腸活 (腸内の状態を良好に保つ活動) 効果も期待できる食材です。
新鮮なとうもろこし
とうもろこし(スイートコーン)は、6月~9月中旬、初夏から初秋にかけて収穫されます。
新鮮なとうもろこしを見分ける方法は以下です。
見分け方
- 皮は濃い緑色をしているか
- ひげは濃い茶色で、フサフサとしているか
とうもろこしを買うときは、できるだけ皮で覆われたものをおすすめします。
皮の色は、鮮やかな緑色のものがいいようです。また、ヒゲがしっとりしていて濃い茶色になっているのは、甘く熟している証拠だそうです。
そんなときも、目安とするのはヒゲです!
とうもろこしののヒゲはめしべで、粒と同じ数あります。つまり、フサフサなものほど粒が多いことを示しています。
ふっさふさのヒゲのとうもろこしの皮を剥くと、ぎっしりと詰まった実が出てきました。
とうもろこしは、鮮度を保つことが難しい野菜の一つです。収穫された時点からどんどん糖分がでんぷん質に変化し、甘みが薄れてしまいます。
保存方法
冷蔵庫の保存は3日ほどですが、すぐに食べないのなら冷凍保存がおすすめ!鮮度をキープできます。
以下で、皮つきのまま冷凍するラクちん保存方法と、レンチンすることでより甘みをキープする保存方法の2つを紹介します。
そのまま保存する方法
今回は、朝どれとうもろこしを取り寄せました。このような形で送られてきて、ちょっとびっくり( ゚Д゚)
途中で1本くらい取られても分からない・・・。いい人の手を渡ってきたと信じます。
ヒゲの先端は切り落とされており、そのまま下処理できるきれいな状態でした。
ヒゲが付いている場合は、周りの土などを払い落とし、ヒゲも切り落とします。
1本ずつラップにぴったりと包みます。
あとは、冷凍用保存袋に入れ、口を閉じて冷凍するだけです。
野菜を保存するときは、元あった形で保存するのが一番いいようです。なので、垂直にして保存しました。
冷凍庫で1ヵ月程度保存可能だそうです。
2週間後
凍っているまま、電子レンジで5分ほど温めてみました。
粒がプリプリしていて、美味しかったです。
蒸して保存
我が家には蒸し器がないので、電子レンジで加熱します。
皮つきのまま耐熱皿にのせてラップをして、電子レンジ (600W) で1本あたり4~5分、2本なら8~10分加熱しました。
1本、300gの目安です。
保存するときは、粗熱が取れたあと、皮についている水分をペーパータオルで拭き取ります。
そして、そのまま1本ずつラップでぴったりと包んで(先ほどと同じように)冷凍用保存袋に入れます。
こちらも、冷凍庫で1ヵ月程度保存可能です。
家庭用冷凍庫では、冷凍に時間がかかるため粒の水分が蒸発しやすいと言われています。なので、実の水分を保つため芯から切り離さずに保存するといいそうです。
解凍方法
ラップのまま耐熱皿にのせ、電子レンジ(600W)で、1本(300g)あたり5分ほど加熱します。
冷凍するときは固めに茹でておくと、解凍後の食感がシャキシャキとよくなります。
個人的には、生のまま冷凍する方が好みです。
丸々とうもろこしご飯
新鮮なとうもろこしを丸々1本使って、とうもろこしご飯を作ってみました。
ポイントは、芯も使うことです。
とうもろこしの芯には全く栄養素がないのかと思いきや、芯にはまだまだ身の胚芽が残っている状態なのだそうです。
その胚芽には、旨みに関わるグルタミン酸や、甘みを感じるアラニンなどの様々な旨み成分が詰まっています。
調理方法
- とうもろこし3等分に切り分ける
- 米3合をといで炊飯器の内釜に入れ、3合の目盛りまで水を入れる
- とうもろこしの実を切り取り、芯と一緒に②に入れて炊く
※とうもろこしの芯の部分は固いので、切るときは、お気を付けください。
こんな感じで炊きあがりました。
今回は、塩を入れず、普通の炊飯と同じ量の水を入れて炊きました。
お好みで少し塩を入れてたいたり、炊きあがったあとにバターを入れても美味しいかもしれません。
便利グッズ
私は、とうもろこしを3等分して、切った部分を下に(しっかり固定)して、実を包丁でそぎ落としました(慣れれば簡単です)。
でも、楽に実を取ることができる便利グッズもあるようです。
芯ごと煮込んだコーンスープ
コーンスープも、芯の部分を使えば、風味がさらに引き立ちます。
ポイントは、最初に、芯を茹でたお湯を使うだけです。
材料(2人分)
- とうもろこし:1本
- 水:300cc
- 牛乳:300c
- コンソメ
- 塩:味を調える程度
※牛乳の代わりに豆乳を使うこともできます。
作り方
- とうもろこしの実を切り取り、芯も切っておく
- 300㏄の水に芯を入れて15分ほど煮込む
- ②から芯を取り出し、コンソメを入れておく
- 実をミキサーでクリーム状になるまで攪拌する
- ③に、クリーム状の実と牛乳を入れて、ひと煮立ちさせる
- (お好みで)塩で味を調える
芯を煮込んでいる間にお湯は減りますので、牛乳 (もしくは豆乳) の量をお好みで調整してください。
先日、テレビ番組で紹介されていました。
「ひと煮立ち」とは、煮汁を沸騰させ、ひと呼吸おいたらすぐに火を止めること。煮立ってから30秒程度までが目安だそうです。
普通のコーンスープを作る際に芯を加えるのがポイントです。
芯は、少し小さめに切ってみました。
今回は、3分ほど電子レンジで加熱したとうもろこしを使いました。生より、切りやすかった気がします(あくまでそんな気がしたレベルです)。
※とうもろこしの芯の部分は固いので、切るときは、お気を付けください。
実の方は、粒が残るくらいになる程度にしました。
出来上がりに、お好みで、オリーブオイルをひとかけしても美味しいです。
とうもろこしのヒゲ
ところで、とうもろこしの実を食べるとき、とうもろこしのヒゲがちょっと邪魔ですね。
でも、とうもろこしのヒゲも大切な食材なので、食べる前にヒゲを取って置くと、いろいろ使えます。
ヒゲ茶
とうもろこしのヒゲを乾燥させて、お茶とすることができます。とうもろこし茶は、韓国ではよく飲まれるお茶です。
ちなみに、とうもろこしのヒゲは英語で「Silk」 です。なので、Silk Tea。なんか体によさそうな気がする名前です。
中央アジアのキルギスにいた時、よくとうもろこしを買ってきて、ヒゲでお茶を作っていました。
キルギスのとうもろこしは、日本のものに比べて、あまり甘くありません。でも、初夏には、茹でたとうもろこしを売るワゴンがでるほど人気なのです。
ヒゲの炒めもの
ヒゲの炒めものは、キルギスで自炊していたときよく作っていたものです。
炒めものとしましたが、薄くオリーブオイルをしいて、強火でササっと炒めるだけのものです。
上の写真のとうもろこしのヒゲは、1日乾燥させたものを使っています。焦げ目がついたら出来上がり!
乾燥させなくても大丈夫ですし、油を使わない乾煎 (からい) りにしてもいいかもしれません。
最後に、軽く塩を振りかけて出来上がりです。冷めてしまうとベチャとしてしまうので、熱々がおすすめです。
キルギスでは、イスラム教徒も住んでいるのですが、お酒は自由に買えることができました。
乾燥していて暑い日が続くキルギスで、ヒゲの素揚げをおつまみにキーンと冷えたビールを頂くのは(不便なことが多かった場所で)ちょっと贅沢なひと時でした。
さいごに
薬膳と聞くと、特別な生薬を用意しないといけないのではと思われがちですが、身近な食材で作れます。
作るときには、自分の体質を知ることも大切です。といっても、体質が異なる家族のために、別々の食事を作るわけにはいきません。
そんなときは、旬の食材を選んで加えるといいそうです。なので、いま旬を迎えている「とうもろこし」は、最適の食材です。
とうもろこしは、食物繊維が多いの腸活に向いているだけでなく、水分を溜め込みやすい梅雨の時期にもぴったり!
梅雨の養生ポイント
- 梅雨におすすめの食材で体質をサポートしましょう。
- 適当な運動をしましょう。 汗をかく事で、さらに体内の水分代謝が促進されます。
蒸し暑く、しかも雨が多いこの時季。体も頭もだるくなりがちですが、そんなときこそ汗を十分にかき、胃腸を温めてあげる生活を意識して、スッキリ気分で梅雨を乗り切りましょう!
※薬膳については、薬科大学の授業で習ったことを中心にまとめました。
最後までご覧いただきありがとうございます。